世界貿易機関(WTO)は世界153カ国が加盟し、全ての加盟国に対して同じ関税を適用する貿易自由化を行っている国際機関であり、なかでも、2001年11月にカタールのドーハで行われた第四回WTO閣僚会議で採択された多角的貿易交渉「ドーハ開発アジェンダ」、通称、「ドーハ・ラウンド」は、ウルグアイ・ラウンドの農業版とも言われ、農産物の関税撤廃・農家への補助金削除を実行することで貿易の自由化を促進し、発展途上国の開発経済に寄与するための国際的な貿易ルールの取り決めとなっています。
2008年7月に閣僚会合がジュネーブで開催されたWTO農業交渉は、補助金の削減や関税の引き下げ、日本を含む食糧輸入国による重要品目数の「4-6%」という具体的妥結が見られる直前、農産品の輸入急増時に発展途上国が発動する緊急輸入制限措置の発動条件などを巡って米国と中国・インドとの間で対立が起き、交渉が決裂した形で閣僚会議は閉幕することになり、WTO「ドーハ・ラウンド」の2008年内合意が困難になりました。この交渉決裂以降、世界では自由貿易協定(FTA)及び経済連携協定(EPA)が急激に加速することとなります。特に、アジア地域における急速なFTA/EPAの締結は、アジアを単一市場に生まれ変わらせる一つの動きとなり、その域内統合のハブとなるASEANにおいては2015年までに「ASEAN経済共同体」の設立が年次目標として設定されています。また、2002年に合意されたASEAN・中国自由貿易地域(ACFTA)は、農産品自由化の前倒しである「アーリー・ハーベスト」を盛り込み、2015年までにACFTAの完全施行が予定されています。
アジア・パシフィック諸国については、アジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)構想のもと、環太平洋戦略的経済パートナーシップ協定(TPP)を通じたAPECを土台にした包括的な自由貿易圏の設立構想が2010年末に浮上し、TPPとは貿易や投資、人の移動など幅広い分野で、全ての物品の関税を即時または10年以内に撤廃するのが原則となり、通常のFTAより水準が高いことが特徴となっています。FTAAPはASEAN+3、ASAN+6、TPPといった現在進行している地域的な取り組みを基礎として更に発展させることにより、包括的な自由貿易圏の構築を目指すものとされています。そのなかで、日本国政府は国家戦略としてFTA/EPAを活用した東アジア広域にわたる自由貿易圏の設立に注力をし始めています。
2007年に合意されたASEAN・日本経済連携協定(AJCEP)を中心とし、ASEAN諸国とも個別にFTA/EPAを締結し、螺旋状にその自由貿易協定を締結することで包括的な域内統合を進めています。ASEANをハブとした域内統合が進むなか、一方、FTA/EPAの構成要件はWTO/GATT第24条にあり、そこで明記されている「実質上すべての貿易」の関税撤廃の一般的解釈は貿易量の90%とされています。協定上認められる10%の貿易量について、日本国政府は国境措置を取り、高関税を付す等、未だ農産品の自由化を域内でのFTA/EPAに盛り込めておらず、結果として、域内統合の主権においては中国に後塵を拝しています。FTAAPの実現に向け、農業市場自由化は近い将来必ず迫ってきます。「保護化」から「自由化」へ。「攻め」に転ずる国内農業市場の国際的競争力の向上が急務となっています。






